松本零士にとって思い出深い幻の単行本デビュー作

宇宙作戦第一号

松本あきらの名で出版され、昭和30年代SFブームの先駆けとなった、夢と冒険とロマンあふれる名作。後の「銀河鉄道999」や「宇宙戦艦ヤマト」などの作品に登場するヒーローやヒロインの原型がここにある。

著者初の単行本を半世紀ぶりに完全復刻!
本書はSFロマンの大家、松本零士が18歳のときに描き、「松本あきら」名義で3年後に刊行されたものの完全復刻です。当時の著者は、地元・九州にやってきた手塚治虫に才能を認められ「火の鳥」の原稿を手伝うなど、早熟ぶりを遺憾なく発揮していたころ。

物語は、異常な放射能の影響で、火星が地球に接近し衝突するという近未来。それは地球制服をもくろむ異星人の策略だという。「地球最後の」が迫るなか、滅びの星から派遣された謎の美女の力添えで、人類救出の命運を担った宇宙船が出航する…。

日本SF界の黎明期に先駆けた、ロマンあふれる長篇SF物語。
付録には、著者と小松左京氏の対談が載った小冊子がつきます。

■書誌データ

  • ■区別:復刻コミック
  • ■ISBN:4778030184
  • ■商品名:宇宙作戦第一号
  • ■著者:松本零士
  • ■本体価格:2,200円
  • ■形体:B6変
  • ■発売日:2006.1.25

特別コラム

中野晴行曰く

 マンガで稼ぐ、という意味では松本零士のデビューは高校時代ということになるでしょう。高校1年生のときに雑誌『漫画少年』に投稿した「蜜蜂の冒険」が実質的なデビュー作。この作品を見た毎日新聞西部本社の依頼で、『毎日小学生新聞』で昆虫を主人公にしたマンガを連載し、その原稿料で授業料を払い、服や教科書も買っていたそうです。卒業したら毎日新聞の嘱託になって、そのままマンガで生計を立てようとさえ考えていました。
  しかし、思い通りにはならないもので、担当者が大阪本社に転勤してしまいました。仕事がなくなった松本は、学資を得るために東京の雑誌に原稿を送る一方、描き下ろし単行本『宇宙作戦第一号』を描いて出版してくれるところを探しました。雑誌に送った原稿は、光文社の『少女』に「黒い花びら」という作品が採用され、しばらくは、少女雑誌の別冊付録を描いて小倉から東京の編集部に送って生計を立てるようになりました。一方、描き下ろし単行本はなかなか出版が決まらずに、幻の作品になりかかっていました。
  この『宇宙作戦第一号』は、199×年の北九州の未来都市を舞台にしたSF作品です。スケールの大きさや、登場するロボットがみんな絶世の美女であることなど、のちの『宇宙戦艦ヤマト』や『銀河鉄道999』『キャプテンハーロック』などの萌芽のようなものを感じます。
  出版が決まらなかったのには、当時の出版事情もありました。マンガの主力は、描き下ろし単行本から雑誌へと完全に移っていたのです。リスクの多い新人の描き下ろしを出すところはほとんどありません。
  そうこうするうちに、東京の編集部からは一刻も早く上京せよ、という催促が来るようになりました。今なら飛行機で2時間足らずの東京と小倉ですが、その頃は列車で1日以上も離れていました。編集部としても、才能ある新人の松本には早く東京で仕事をしてもらいたかったのでしょう。
  松本は、大好きなベートーベンのレコードを質入れして工面したお金で、東京までの片道切符を手に入れました。上京する以上は帰らないと覚悟を決めたのです。
  小倉から夜汽車に乗って東京に向かうシーンはそのまま『銀河鉄道999』に繋がっています。ある雑誌のインタビューで松本は筆者にこう語っています。
「999号が出発して、いよいよレールが途切れるシーンは、関門海峡を越える瞬間です。車中の情景もそのときのままですね。もう帰ることは出来ない。そういう惜別の気持ちです。鉄郎が列車の窓から『とうとうオレは行く。二度と帰らん』と言いますね。あれは私自身です」
  上京した松本は本郷の下宿に暮らすようになりました。代表作の『男おいどん』は、松本の下宿生活がモデルになっています。1963年になって、『宇宙作戦第一号』は、ようやく東京・小石川の昌和漫画出版社から刊行が決まり、松本にとっては思い出深い単行本デビュー作になったのです。

本書の読みどころ!

POINT01


©松本零士

199X年の北九州市。航空研究所のパイロット・旭日ケン太郎は異状運動を起こしている火星が、半年後には地球と衝突するという情報を聞かされる。地球を救う方法はあるのだろうか? そして、研究所周辺には怪しい美女の存在が……。

POINT02


©松本零士

研究所のロケットを狙って謎の侵入者が。機関銃も通用せず、逆に銃身をひん曲げてしまうほどの怪力を持った侵入者。その前に立ちはだかったのは遊星ヘレネから地球を助けるために派遣されたファンタであった。彼女は恐るべき事実を語り出す。