初めて描き下ろした幻のデビュー作を完全復刻!!
ロケットマン
水木しげるの貸本デビュー第一作がついに完全復刻!! 1958年に紙芝居から転業した著者が、同じ年に初めて描き下ろした幻のデビュー作を一般刊行書として初めて完全復刻する。
地球に迫りくる「第二の月」をめぐって、調査隊が派遣されるが、陰謀により消息を絶つ。調査隊の隊長の学者が変身し、海中から“グラヤ”として現れ、侵略者のネオドライロボットと対決する。ロケットマンが出現し解決するが、そのロケットマンの意外な正体は……!? 奇想溢れる水木流SFの早すぎた傑作が別冊付録『プラスチックボーイ』とともに甦る!!
■書誌データ
- ■区別:復刻コミック
- ■ISBN:9784778031541
- ■商品名:ロケットマン 限定版BOX
- ■著者:水木しげる
- ■本体価格:4,200円
- ■形体:B6
- ■発売日:2010.11.29
特別コラム
山田英夫曰く
「テレビくん」のヒットで〝貧乏神〟とオサラバした水木しげるの、いわば下積み時代だった貸本マンガ家時代。「腐ったバナナ」を食べるのが唯一の楽しみだったという逸話はあまりにも有名で、磨きがかかったビンボー話にはことかかない。
そんな先生の赤貧時代が、いまからみると存外、ゆとりのある暮らしに見えるのは、なぜだろうか。貸本デビュー以前の先生は、斜陽の紙芝居業界で露命をつなぎながら、生活に追いまくられていたはずなのに。
現在、『ビッグコミック』で連載中の「ゲゲゲの家計簿」をみると、高度経済成長以前、借家が当たり前だった東京の庶民とくらべ、持ち家に済み、空き部屋からの家賃収入まであった水木一家の暮らしぶりはなんとも和やかにみえる。「子どものころから好きだった」という趣味の建築(設計)にうつつをぬかし、仕事が夜業になる場面もあり、なんとものどかなのだ。
50年代半ばころから衰退していた紙芝居業界のしんがりで苦闘する作者の心中は穏やかではなかったはず。ただでさえ、夫婦ふたりのほかに、長男一家、勤めに出ていたとはいえ次男など、大家族のたつきを右腕一本で支えなくてはならなかったのだから。それでも、水木先生の手にかかると、そんな苦闘の時代もユーモラスで郷愁すら誘う、〝ものはなくてもゆたかな時代〟に見えてしまうのが不思議だ。
もちろん、結婚後のくらしを描いたドラマ「ゲゲゲの女房」のやや美化された描かれ方の印象もあるだろう。ただ、そんな「余裕」は、「おわりよければすべてよし」を地でいくような、高度の幸福度を誇る現在の水木先生一流の、貫禄と達観の境地のなせる技。水木先生得意の飄逸な諧謔に騙されてはいけない。
同じ紙芝居からの転身組だった白土三平に遅れること1年。1958年に発表されたデビュー作となる異色のSF活劇「ロケットマン」を読めば、ゴジラやスーパーマンもどきが暴れまわるスペクタクルの背後に、リアリスト・水木しげるの渾身の黒いユーモアがたっぷり味わえるだろう。
その後、まったく売れなかった貸本時代に、〝努力しても報われない〟生への、無念と怒りを昇華させた数々の傑作が生み出される、その下地は、特撮映画の意匠をかりて奇想天外のかぎりをつくした、このデビュー作にもすでにあきらかなのだ。
POINT01

©水木しげる
ある日、東京の上空に巨大な「第二の月」が現れ、都民は恐怖のどん底に。日本初のノーベル賞受賞者・上津戸博士は、偵察の必要を説き、息子・新一に「怒雷博士に気をつけろ」と言い残して自らロケットに乗り込む。「第二の月」に接近した上津戸博士が見たものは…。
POINT02

©水木しげる
形のない宇宙生物に乗り移られ地球に帰還した上津戸博士は、努雷博士により海中に葬られるが、怪獣「グラヤ」に変貌。科学力で日本中を停電させた怒雷博士は、「西首相」に退陣を要求する。グラヤと努雷の巨大ロボット「ネオ・ドライ」との首都決戦の行方は…。
POINT03

©水木しげる
日本を占領した努雷は、グラヤに水爆を落として葬る。が、鋼鉄製のグラヤはロボットで、新一の父が変身したグラヤは洞窟に生きていた。「第三の男」ロケットマンが登場、「第二の月」を操っての怒雷の陰謀を暴く。彼こそ、上津戸博士の息子・新一だったのだ。