幻のデビュー作、半世紀の時を経て完全復刻

完全復刻版 こがらし剣士

本書は1957年に巴出版から刊行された著者の記念すべきデビュー作です。紙芝居などを経てスタートしたマンガ家としての出発点であるだけでなく、忍者武芸帳~カムイ伝へといたるマンガ史上に残る画業の原点として貴重な作品です。

■書誌データ

  • ■区別:復刻コミック
  • ■ISBN:9784778030537
  • ■商品名:完全復刻版 こがらし剣士
  • ■著者:白土三平
  • ■本体価格:1,900円
  • ■形体:B6
  • ■発売日:2007.11.27

特別コラム

山田英夫曰く

 水木しげるの貧乏時代の逸話はドラマなどで国民的?に周知の事実である。のちに「ガロ」執筆陣の盟友となる白土三平もまた、貸本マンガ家デビュー前後の時代は〝食べていくため〟に必死であった。
白土三平の単行本デビューは1957年夏、巴出版から刊行された「こがらし剣士」で、B6判上製本128ページの堂々としたもの。 50年代なかばからデビュー作までの数年間、白土が喰い扶持を得ていた紙芝居業界の衰退は誰の目にも明らかで、白土もまた転身の道を探っていた。そこへ、やはり紙芝居仲間だった先輩マンガ家と再会。マンガ仕事の手伝いを始めると、それと並行してわずか数か月後には、「こがらし剣士」を描き上げ発表してしまうのだ。行く所敵なし、といった旺盛な執筆ぶりは、結婚して家庭をもち、子だねを授かったことがバネになっていたのは明らかだ。
 この貸本デビューまでの数年間、白土は、共産党系の機関誌に四コママンガを連載したこともある(「まもるチャン、56年、小社刊の「甲賀武芸帳 限定版BOX1」の解説読本に第1回を収録)。
 白土が属していた紙芝居集団の本部事務所は葛飾区の下町にあり、白土はその近くに紙芝居仲間と一緒に暮らし始めていた。その紙芝居仲間が始めた人形劇集団「太郎座」で白土は、紙芝居仕事のかたわら舞台絵制作などにも手を貸している。人形劇の仕事はほとんど収入に結びつかなかったはずで、あらゆる機会に表現を吸収し吐き出していた、若い日の作者の姿が彷彿とされるではないか。ちなみに、このころ仲間うちで「もやしの三ちゃん」、通称「三平」と呼ばれたことから、のちの筆名が生まれたそうだ。
 そして、記念すべきデビュー作「こがらし剣士」―。気が優しく臆病な少年剣士・きり太郎と甲賀流忍術の達人・カスミが母探しの旅に出るが、行く手には仇の忍者だけでなく、親を武士に殺され無頼の徒となったこけ丸や丹下左膳まで登場。主人公の窮地を救う謎のこがらし剣士の正体は……と、物語はこの後の長い物語を予感させつつ幕を閉じる。生き生きとした魅惑的なキャラクターと、飛びぬけて「動き」のある絵、スピーディーなコマ運び、講談にも似ためくるめく物語展開……とあげていくと、紙芝居、人形劇で鍛えた作者がいかにおおくのものをこの処女作に詰め込んだのか、興味が尽きない。
 まだ、「将来の夢は画家」だった青年・白土三平の、神話と伝説に包まれたマンガ家人生はここから幕を開けたのだ。

<参考文献> 
武田巧太郎「雑踏をめぐり海へ」(「甲賀武芸帳 限定版BOX1」所収)
毛利甚平「白土三平伝―カムイ伝の真実」(小学館)     

本書の読みどころ!

POINT01


©白土三平

 謎の剣士・こがらし剣士が登場するや、ばったばったと強敵を斬り倒す。秘剣「この葉の舞」と、こがらし剣士の正体は…!?

POINT02


©白土三平

 少年剣士・きり太郎は母を探しての道中、天下争乱を呼ぶ巻物を守るため深山に忍ぶが甲賀流忍者の父娘と出会う。真陰流名人・白雲とカスミだった。しかし、東原心によって白雲は殺される。きり太郎とカスミは仇の姿をたずねて、新たな旅に出る。